労災について Q3

Q.労災事故があり、会社に対し安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求したいと考えています。
ところで私は既に労災保険からある程度の額の給付を受けています。
 労災保険から受けた給付金額は、会社に対する損害賠償請求額から差し引かれるものなのでしょうか。

 

A.

1 労災保険の保険給付の大部分は被災労働者の損失を補填する意味をもっていますので、使用者や加害者に対する損害賠償請求額から控除される(差し引かれる)ものが多いです。
 ただし給付の種類によって控除される・されないが分かれます。

2 「特別給付金」は控除されない
 労災保険の中には、労働福祉事業の各給付があります。
 主として、(1)介護料の支給、(2)修学援護費の支給、(3)むち打ち症患者に対する援護費の支給、(4)筋電動義手など補装具の支給、(5)特別支給金の支給などです。
これらは、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであって損害をてん補する性質を有するということはできないということ等の理由から、使用者や加害者に対する損害賠償請求額から控除されないこととされています。
最高裁平成8年2月23日判決も控除されない旨判示しています。

3 損害項目別調整の原則
労災保険の保険給付の種類は、療養、休業、障害・介護・葬祭、遺族の各給付項目に分かれています。
この分かれている給付項目に対応する損害項目との関係で控除されるということになります。
次のような関係になります。

(労災保険給付)                     (損害)
療養給付                          治療費
休業給付・傷病給付                  休業損害
障害給付(障害補償年金、障害補償一時金)     後遺障害による逸失利益
介護給付                          介護料
遺族給付(遺族補償年金、遺族補償一時金)     死亡による逸失利益
葬祭料                           葬儀費

 たとえば、遺族給付の額が多額で損害中の「死亡による逸失利益」の額よりも多かったとしても、他の損害、例えば「葬儀費」の分まで控除する、ということはできない、ということになります。
 
4 概要は以上の通りです。
 その事案ごとの労災保険給付と損害賠償との関係についての具体的な計算については、弁護士にお尋ね頂くことをお勧めします。