相続について(相続人、相続分、遺言、遺留分)

1.相続事件については、次のような相談をいただきます。

あとの各項目で、それぞれ相談の中身に対応した説明をさせて頂いています。

少しでも、皆様に起こりえる相続事件の内容をイメージして頂き、その中で、重要な方針を決めたり、他の相続人との間の調整をしたり、具体的な金額の計算をすることなどについて、弁護士が、専門的にサポートさせていただきます。

 

相談1
「父が亡くなり、各種の財産も多少あるのですが、これから先どのようにしたらいいのか、全く分かりません。」

2 相続事件の流れ

3 相続人となるのは誰か(相続人の範囲)

 

相談2
「私には、どれくらいの遺産がもらえるものでしょうか。計算の仕方、額の見込みなどを教えて下さい。」

4 相続財産となるのはどのようなものか(相続財産の範囲)

5 どのような割合で財産を取得するのか(相続分)

6 特別受益

7 寄与分

 

相談3
「父が亡くなったのですが、借金ばかりで、ほとんど財産もありません。できれば相続したくないのですがどうしたらいいでしょうか。」

8 相続放棄」(「9 限定承認」)

 

相談4
「遺産分割について、他の相続人と揉めてしまって、当事者同士では解決しそうにありません。どうしたらよいでしょうか。」

10 遺産分割

 

相談5
「父が死亡した後に遺言書が出てきました。その遺言書によれば、私の兄に『遺産の全てを相続させる』と書いてあったとのことです。このような場合でも、私には最低限保障される『遺留分』というものがあると聞きました。遺留分請求についてはどのようにしたらよいのでしょうか。」

11 遺留分

 

相談6
「相続のことで弁護士に事件を依頼するとどれくらいの費用がかかりますか。」

12 弁護士費用

 

 

2.相続事件の流れ

相続は,被相続人が死亡したときから開始しますが,近しい人が亡くなったという大変な状況の中,何から手をつけたらよいのか分からないという方も多いと思われます。しかし,相続の手続は,期間の制限があるものもあり,後から取り返しが付かないことにならいようしっかりと理解しておくことが必要です。

以下では,時系列に沿って,相続の手続を簡単に説明します。

相続の開始 被相続人の死亡
(葬式の準備)
(各種手続)

1週間以内

死亡届の提出
死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは,その事実を知った日から3か月以内) に提出する必要があります。提出先は,被相続人の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市町村役場です。死亡届には,死亡診断書又は死体検案書を添付する必要があります。

遺言書の有無を確認
遺言書がある場合は,家庭裁判所において検認を行います。なお,公正証書遺言書は,偽造・隠匿等のおそれがないため,検認は必要ありません。

相続人の確認
戸籍謄本等を取り寄せて確認しますが,被相続人が養子縁組を行っていた場合や相続放棄等が絡むとかなり大変な作業になることもあります。

相続財産の把握
被相続人がきちんと財産の目録等を作成してくれていればよいですが,そのようなことは少ないため,(1)金融機関から相続開始時の残高証明書を取り寄せる,(2)法務局から不動産登記簿謄本を取り寄せる,(3)負債の有無の確認等の作業を行うことになります。


3か月以内 相続放棄・限定承認
この時点で,相続放棄等を行うべきか判断が付かない場合,家庭裁判所に対し,期間を伸長する手続を取る場合もあります。

4か月以内 被相続人の所得税の申告(準確定申告)

遺産分割協議
合意できた場合
合意できなかった場合
遺産分割協議書の作成
遺産分割調停・審判
遺産の分割

10か月以内 相続税の申告・納付

 

3.相続人となるのは誰か(相続人の範囲)

民法上,相続人となり得る者は,被相続人の子(孫等の直系卑属を含む),父母等の直系尊属,兄弟姉妹(その直系卑属を含む)及び配偶者です。相続開始の時に胎児であっても,相続権は認められます(民法886条1項)。

ただし,これらの人々が全員相続人となるわけではなく,次の順位に従って相続人となる者が決まります。

<第1順位> 被相続人の子
まず,被相続人の子が相続人となります。
ここでの子とは,実子,養子,嫡出子,非嫡出子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子)を問わず,被相続人と法律上の親子関係があれば,相続人となります。法律上,嫡出子と非嫡出子とでは,相続分は異なりますが,そのことと相続人となるかどうかとは関係がありません。

なお,相続の開始以前に相続人となるべき子が死亡していたり,その他の事由で相続権を失った場合,孫以下の直系卑属が,その者が受けるはずであった相続分を承継します。これを「代襲相続」といい,相続分を承継される者を「被代襲者」,相続分を承継する者を「代襲者」といいます。かかる代襲者についてさらに代襲相続が発生する事由がある場合,代襲者の子が代襲します。これを「再代襲相続」といいます。

代襲者が承継するのは,被代襲者が受けるはずだった相続分ですから,例えば,被代襲者に子が二人いた場合,二人の子は,親が受けるはずだった相続分をそのまま承継することになります。つまり,この場合,二人の子は親の相続分を2分の1ずつ相続します。

 

<第2順位> 被相続人の直系尊属
第1順位の相続人となる者がいないときは,被相続人の直系尊属が相続人となります。
被相続人の直系尊属とは,被相続人の父母,養父母,祖父母等ですが,被相続人により近い直系尊属が優先して相続しますから,例えば,相続人として父母がいる場合,祖父母は相続人となることはできません。

なお,被相続人の配偶者の直系尊属(義理の両親等)は,相続人とはなりません

 

<第3順位> 被相続人の兄弟姉妹
第1順位及び第2順位の相続人がいないときは,被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

なお,相続の開始以前に相続人となるべき兄弟姉妹が死亡していたり,その他の事由で相続権を失った場合,兄弟姉妹の直系卑属が相続人となります。ただし,この場合,相続人となるのは,甥,姪に限られ,子のときのように再代襲は認められていません

 

<配偶者>
配偶者は,常に相続人となり,上記順位に従って他に相続人となる者がいないときは,単独で相続人となります。配偶者の順位は,上記順位に従って相続人となる者と常に同順位です。

なお,ここで配偶者とは,法律上の婚姻関係にある夫婦の一方のことであり,内縁の配偶者を含みません

 

(相談例)
先日,父が亡くなりました。母は既に亡くなっており,相続人は子供達だけですが,その中に1人,何年も音信不通の兄がいます。遺産分割協議を行いたいのですが,このような場合,どうしたらよいのでしょうか?

<回答>
このままの状態では遺産分割協議を進めることができませんので,まずは戸籍をたどるなどして,お兄さんの現状を確認できるかどうかから始めることになります。
そのような手段を尽くしても,お兄さんの現状を確認できない場合,遺産分割協議を進める方法として,家庭裁判所に対し,不在者財産管理人の選任を申し立てる,あるいは家庭裁判所に対し,失踪宣告を申し立てることが考えられます。

不在者財産管理人が選任された場合,この財産管理人に参加してもらうことで,遺産分割協議を進めることができます。また,失踪宣告が認められた場合,不在者の生死が不明になってから7年間が満了したとき(震災等の危難失踪の場合は,危難が去ったとき)に死亡したものとみなされ,相続が開始されることなりますから,遺産分割協議を進めることができます。

いずれの方法が適切かは,お兄さんの不在状況等によって異なりますから,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

※相続欠格
相続人となるべき者であっても,相続制度の根幹を破壊するような重大な非行がある場合,「相続欠格者」として,相続人たる資格を当然に失います。
民法が定める欠格事由は,次の5つです。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発・告訴しなかった者
  3. 詐欺・強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,これを取り消し,又はこれを変更することを妨げた者
  4. 詐欺・強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,これを取り消させ,又はこれを変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造,変造,破棄又は隠匿した者

※相続人の廃除
相続人に欠格事由まではない場合であっても,一定の事由がある場合には,被相続人の請求により,遺留分を持つ相続人の相続権を失わせることが認められています。これを相続人の廃除といいます。廃除の対象となる相続人が,遺留分を持つ相続人に限定されているのは,遺留分を持たない兄弟姉妹に相続させたくなければ,相続分を与えなければ足り,わざわざ廃除の手続をとる必要がないからです。

無制限に相続人の廃除が認められると,相続人の順位を定め,遺留分を認めた法の趣旨が失われるため,廃除をするには一定の事由がなければなりません。民法上,(1)推定相続人が,被相続人に対し虐待をし,若しくは(2)これに重大な侮辱を加えたとき,又は(3)推定相続人にその他の著しい非行があったときに相続人の廃除が認められています。

廃除の方法としては,被相続人が生存中に,家庭裁判所に調停又は審判を求めることによって行う方法と,遺言によって行う方法があります。遺言によって行う場合は,遺言の効力発生後,遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求を行うことになります。

 

4.相続財産となるのはどのようなものか(相続財産の範囲)

相続人は,相続開始の時から原則として被相続人の財産に属した一切の権利義務を包括的に承継します。これは,相続人が,被相続人のプラスの財産(積極財産)だけでなく,債務(消極財産)も相続することを意味します。

したがって,被相続人が借金だけを残した場合,相続人は,その借金のみを相続することになりますし,消極財産が積極財産を大幅に上回ることもあります。このような場合に取り得る手段として,「相続放棄」があります(詳しくは相続放棄の項目をご覧下さい。)。なお,借入金といった金銭債務は,遺産分割によって相続するのではなく,相続分に応じて,各相続人が当然に分割承継しますからご注意ください。

相続財産としては,「土地」,「建物」,「現金」,「預貯金」,「株式」,「貴金属」,「自動車」,「債権」,「債務」等が主だったものとして考えられますが,よく問題となるものとして,次のものがあります。

<生命保険金>
被相続人が契約していた生命保険金の請求権が,相続財産となるか否かは,受取人が誰に指定されているかによって,結論が異なります。

第一に,受取人が「ある特定の相続人」に指定されている場合,受取人は,保険契約の効力として保険金請求権を取得するので,保険金請求権は受取人の固有財産となり,相続財産とはなりません

第二に,受取人が単に「相続人」,「法定相続人」となっている場合,最高裁は,特段の事情がない限り,相続人の固有財産になると解しています。やはり、相続財産とはなりません。なお,相続人が複数存在する場合,法定相続分に応じて権利を取得するという考えと,各相続人が均等に権利を取得するという考えの二つがありますが,保険約款に定めがある場合は,それに従うことになります。

最後に,受取人が指定されていない場合や「被相続人」となっている場合は,相続人に帰属するわけではありませんから,相続財産となります

 

(相談例)
先日,父が亡くなりました。生前,父は,事業をしており会社の社長をしていましたが,晩年は経営も上手くいっておらず赤字続きで,多額の負債を抱えた状態だったので,父が亡くなったことを契機に,会社については自己破産を申し立てる予定です。

父は,この会社の多額の債務について,連帯保証人となっており,相続財産は多額の債務超過となっていたため,相続人である母と私達子供らは,相続放棄をしました。父は,生命保険に入っており,保険金の受取人を母に指定していたのですが,相続放棄をしたら,この生命保険金は受け取れないのですか?

<回答>
受取人が相続人中の一人であるあなたのお母さんに指定されている場合,保険金の請求権は,相続財産ではなくあなたのお母さんの固有の財産となります。
したがって,相続放棄をしたとしても,あなたのお母さんは,保険金を受け取ることができます。

受取人が指定されていない場合や「被相続人」となっている場合は,相続財産となりますから,保険金を受け取ると相続を承認したものとみなされるので注意してください。

 

<祭祀財産>
祭祀財産,すなわち先祖代々からの家系を記載した「系譜」,神棚,仏壇,位牌などの「祭具」,お墓やその維持のための墓地の所有権,賃借権といった「墳墓」は,相続財産ではなく,祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継します(民法897条)。

なお,祭祀を主宰すべき者は,被相続人の指定により決まりますが,指定がない場合は慣習によって,慣習が明らかでないとき家庭裁判所の審判により決まります。

このように,祭祀財産は,相続財産ではありませんから,相続分や遺留分を算定する際,考慮する必要はありませんし,相続を放棄しても祭祀財産を承継することは可能です。

 

<遺骸,遺骨>
遺骸,遺骨は,相続財産ではなく,祭祀財産と同様に,祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継します。

 

<香典>
香典は,遺族に対する慰謝や葬儀費用の負担軽減といった趣旨から遺族(の代表者である喪主)に対して贈与されるものですから,相続財産とはなりません

 

5.どのような割合で財産を取得するのか(相続分)

共同相続人間の相続分がいかなる割合となるかは,(1)まず,被相続人の遺言による指定によって決定されます。これを「指定相続分」と言います。

そして,(2)被相続人による指定がない場合には,民法の定めるところによって決定されます。これを「法定相続分」と言います。

以下では,法定相続分について説明します。具体的には,次のとおりとなります。
なお,相続人である子,直系尊属,兄弟姉妹が複数いる場合,それぞれの相続分は均等です(ただし,後述する民法900条4号ただし書に例外があります)。

 

<配偶者と子が相続人の場合>
  配偶者 2分の1
  子   2分の1(子が二人いる場合は,4分の1ずつ)

※相続人に嫡出子と非嫡出子がいる場合,非嫡出子の相続分は,嫡出子の2分の1となります(民法900条4号ただし書)。
これまで,嫡出子と非嫡出子との間で相続分を異なることとする民法の規定が,憲法に反しているのではないかと争われてきましたが,現在のところ,最高裁は,このような規定を違憲とは判断していません。ただし,近時,下級審において,このような規定が憲法違反であるとの判断が相次いでなされており(大阪高等裁判所平成23年8月24日判決,名古屋高等裁判所平成23年12月21日判決等),今後の動向に注意する必要があります。

<配偶者と直系尊属が相続人の場合>
  配偶者  3分の2
  直系尊属 3分の1(直系尊属が二人いる場合は,6分の1ずつ)

<配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合>
  配偶者  4分の3
  兄弟姉妹 4分の1(兄弟姉妹が二人いる場合は,8分の1ずつ)

※被相続人と父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります(民法900条4号ただし書)。

 

6.特別受益

共同相続人中の一部の者が被相続人から,相続分の前渡しとみられるような生前贈与や遺贈を受けた者(特別受益者)がある場合に,それらを考慮しないで相続分を計算すると,特別受益者は,二重の利得をしたことになり,不公平な結果となります。

そこで,特別受益者が存在する場合,民法は,特別な規定を設けて,二重の利得をさせないようにしています。

特別受益にあたるのは,「婚姻,養子縁組のため若しくは生計の資本」として受けた贈与に限られます(民法903条1項)。
婚姻,養子縁組のための贈与とは,持参金,支度金などを意味し,一般に結納や挙式の費用は含まないと解されています。また,生計の資本のための贈与は,生活状態や資産状態等によって異なりますが,結婚に際して住宅を建ててもらったり,進学の際,多額の学費を出してもらった場合などがこれにあたります。

共同相続人中の一人が受取人として生命保険金を取得した場合,これが特別受益にあたるか争いがありましたが,最高裁は,特別受益にはあたらないとした上で,共同相続人間に到底是認することができない著しい不公平があると認められる特段の事情が存する場合には特別受益に準じて持戻しの対象となるとしており,原則的に否定する立場をとっています(最高裁平成16年10月29日第二小法廷決定)。

なお,相続を放棄した者は,特別受益者とはなりませんから,他の相続人の遺留分を害しない限り,特別受益を完全に保有することができます。

特別受益が認められた場合の算定方式は,次のとおりです。

まず,被相続人が相続開始の時において有していた積極財産の価額に,特別受益とみられる贈与の価額を加えたものを相続財産とみなします。これをみなし相続財産といいます。

そして,このみなし相続財産の額を基準として,各相続人の指定又は法定の相続分を算出した後,この相続分から特別利益となる遺贈又は生前贈与の価額を差し引いた残額が,特別受益者の具体的相続分となります。
このような方式によって,具体的相続分を算出した結果,特別受益者の具体的相続分が受益額より多い場合には,その差額が特別受益者の相続分となり,これを相続することになります。

他方,受益額が具体的相続分を超えるときは,特別受益者はその相続分を受けることができませんが,マイナス分を返還する必要もありません。これを返還させることは,故人の意思に沿わないと考えられますし,また先に述べたとおり,相続を放棄すれば,特別受益を完全に保有することは可能だからです。

 

7.寄与分

共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与,貢献をした相続人がある場合,その相続人に寄与に相当する額の財産を取得させるのが公平だといえます。これが寄与分の制度です。

寄与分を受けることができるのは,相続人に限られ,内縁の妻や相続人の配偶者などは含まれません。もっとも,夫婦で協力して寄与,貢献を行った場合,相続人たる一方の配偶者の寄与分として考慮される可能性はあります。

寄与分は,相続人間の協議又は家庭裁判所の調停・審判で決まり,遺言で指定しても,寄与分としては法律上意味がありません。
寄与分が認められた場合,相続財産から寄与分の額を差し引いてみなし相続財産を算定し,これを基準として,各相続人の相続分を算出した後,この相続分に寄与分を加えた額を相続することになります。

具体例

(1) 相続人が配偶者,子A,B,遺産の額が5000万円,子Bは特別受益として200万円の生前贈与を受けていた場合

特別受益を考慮しなければ,配偶者2500万円,子A1250万円,子B1250万円が相続分となりますが,子Bに特別受益があるため,5000万円に生前贈与分200万円を加えた5200万円がみなし相続財産となり,子Bは法定相続分から生前贈与200万円を差し引くことになるため,

    配偶者 2600万円
    子A  1300万円
    子B  1100万円(1300万円-200万円)

が具体的相続分となります。

 

(2) 相続人が配偶者,子A,B,遺産の額が5000万円,子Bは寄与分として200万円が認められた場合

子Bには寄与分が200万円認められているため,5000万円から200万円を差し引いた4800万円がみなし相続財産となり,子Bは法定相続分に寄与分200万円を加えることになるため,

    配偶者 2400万円
    子A  1200万円
    子B  1400万円(1200万円+200万円)

が具体的相続分となります。

 

(3) 相続人が配偶者,子A,B,遺産の額が5000万円,子Aは特別受益として400万円の生前贈与を受け,子Bは寄与分として200万円が認められた場合

子Aに特別受益があるため,5000万円に生前贈与分金400万円を加え,さらに子Bの寄与分200万円を差し引いた5200万円がみなし相続財産となり,子Aは法定相続分から生前贈与400万円を差し引き,子Bは法定相続分に寄与分200万円を加えることになるため,

    配偶者 2600万円
    子A   900万円(1300万円-400万円)
    子B  1500万円(1300万円+200万円)

が具体的相続分となります。

 

8.相続放棄

相続は,被相続人の財産に属した一切の権利義務を包括的に承継するものであり,被相続人のプラスの財産(積極財産)だけでなく,債務(消極財産)も相続することになります。

したがって,被相続人が借金だけを残した場合や,債務が財産を大幅に上回る場合,そのまま相続を承認してしまうと,大きな負債を抱えることになりかねません。このような場合,利用される制度として,相続放棄があります。

相続放棄は,家庭裁判所にその旨を申述することによって行いますが,相続放棄の申述が受理されると,初めから相続人でなかったことになります。

相続放棄は,相続の開始があったことを知った時から,3か月以内にする必要がありますが,この期間は,非常に短いため,この期間内に放棄をすべきか否かを判断することが困難である場合も少なくありません。そのような場合,裁判所に対し,事情を説明してこの期間を伸長することも検討する必要があるでしょう。

 

9.限定承認

これは,相続した財産の範囲で相続を承認するものです。利用されることは少ないですが,相続財産の中に,先祖代々引き継がれてきた土地等があり,どうしても当該土地等を手元に残したいといった事情がある場合などに利用されることがあります。

相続人が数人あるときは,限定承認は,共同相続人全員が共同してする必要があります。共同相続人の内の一部の者が相続放棄をした場合には,これらの者は初めから相続人でなかったことになるため,残りの共同相続人全員で共同すれば,限定承認をすることができます。ただし,利用にあたっては税金等で検討を要する事項もあるため,詳しくは弁護士にご相談ください。

 

10.遺産分割

<遺言書が存在する場合>
遺言書が存在する場合,原則として,遺言に従って分割を行うことになります。
遺言の方式には,自筆証書,公正証書及び秘密証書の3つがあります。この内,自筆証書及び秘密証書については,裁判所の検認手続を受けなければなりません

これを怠った場合,5万円以下の過料に処せられる可能性がありますし,遺言書を故意に隠したと判断され,相続人となることができない可能性もあるため特に注意が必要です。

 

(相談例)
先日,父が亡くなりました。母は,父が亡くなる以前に既に亡くなっており,弟が一人います。
父が亡くなった後,弟と一緒に遺品を整理していたところ,弟が遺言書を発見しました。遺言書は,父の自筆で書かれたもので,私に不動産の全てを,弟に金融資産の全てを相続させる内容となっています。

(1)このような場合,遺言書は,どうしたらよいのですか?
(2)私としては,現在弟が父名義の土地に自宅を建てて居住しているため,この土地だけでも弟に相続させたいと考えています。そのため,弟が相続する土地については,私が相応の現金を受け取り,その他については遺言書のとおりに相続する形にしたいと考えているのですが,遺言書があるのに,このようなことはできるのでしょうか?

<回答>
(1)お父さんの遺言書は,自筆証書と呼ばれるもので,自筆証書を発見した場合は,遅滞なく家庭裁判所で検認の手続を受ける必要があります。これを行った場合は,5万円以下の過料の制裁を受けることもありますから,注意してください。
また,検認の手続を怠ったことにより,遺言書を故意に隠したと判断され,相続人の欠格事由として,相続人となることができない場合もあるため特に注意が必要です。

(2)遺言書がある場合であっても,相続人全員の合意により,遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うことは可能です。本件では,弟さんに,あなたの考えを伝えて,遺産分割協議の交渉を行っていくことになります。ただし,遺言執行者がいる場合には,遺言執行者に無断で遺言書と異なる遺産分割は認められないと考えられていますから,この点の確認も必要です。

 

<遺産分割協議>
遺言が存在しない場合,相続人全員で話し合い合意をして遺産分割を行うことになります。
合意が成立した場合,遺産分割協議書を作成して,遺産分割を行います。

なお,遺言が存在する場合でも,遺言執行者がいない場合には,相続人全員の合意により,遺言内容と異なる遺産分割を行うことは可能です。

 

<遺産分割調停・審判>
協議をしてもまとまらない場合,各相続人は,家庭裁判所に対し,遺産分割調停,審判を申し立てることができます

調停は,調停委員と呼ばれる人が間に入って,話し合いを行うものです。調停で話しがまとまれば,合意内容を記載した調停調書と呼ばれる書面が作成され,これに基づき遺産分割が行われることになります。調停調書には,強制力がありますから,調停調書に基づき強制執行を行うことも可能です。

調停でも話しがまとまらなかった場合,審判手続に移行し,裁判官が当事者の言い分や資料をもとに審判という形で結論を出すことになります。
なお,法律上,調停から先に申し立てなければならないわけではありませんが,調停から申し立てるのが通常です。

 

11.遺留分

遺留分とは,一定の相続人が,相続について法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合であって,被相続人の意思によっても奪われることのないものです。
人は,自己の所有財産を自由に処分できるのが原則ですが,被相続人の財産に依存して生活をしていた相続人の生活保障あるいは共同相続人間の公平な財産相続の要請も無視できません。そこで,認められたのが遺留分の制度です。
遺留分を侵害された相続人は,遺留分に基づいて減殺の請求を行うことができます。この権利を遺留分減殺請求権といいます。

法律上,遺留分を有するのは,被相続人の子(孫等の直系卑属を含む),父母等の直系尊属及び配偶者であり,兄弟姉妹には遺留分はありません

遺留分は,相続人保護のための制度であり,あくまで権利であって義務ではありませんから,これを行使するか否かは,権利者の自由ですし,放棄することもできます。もっとも,相続開始前に遺留分を放棄するには,家庭裁判所の許可が必要です。これは,被相続人等が不当な圧力を掛けるのを防ぐためです。
  
遺留分の割合は,次のとおりです。

 

<相続人が直系尊属のみである場合>
被相続人の財産の3分の1
  
   具体例:父母が相続人の場合
    父の遺留分
     法定相続分2分の1×3分の1=6分の1
    母の遺留分
     法定相続分2分の1×3分の1=6分の1

 

<その他の場合>
被相続人の財産の2分の1
  
   具体例:配偶者と子A,Bが相続人の場合
    配偶者の遺留分
     法定相続分2分の1×2分の1=4分の1
    子Aの遺留分
     法定相続分4分の1×2分の1=8分の1
    子Bの遺留分
     法定相続分4分の1×2分の1=8分の1

 

遺留分を算定する基礎となる被相続人の財産の額は,法律上,「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加え,その中から債務の全額を控除して,これを算定する」と定めています(民法1029条1項)。

「被相続人が相続開始の時において有した財産」とは,相続の対象となる一切の積極財産のことです。
この財産に加えられる「贈与」とは,(1)相続開始前の1年間にされたもの,(2)当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものです。遺贈,死因贈与は,相続開始の時において有した財産に含まれるため,ここでいう「贈与」にはあたりません。

遺留分権者に損害を加えることを知ってしたというためには,客観的に損害を加えるという事実関係を認識していれば足り,損害を加える意思までは必要はないとされていますが,将来においても被相続人の財産が増加することがないという認識は必要であるとされています。

遺留分の減殺は,相手方に対する意思表示をもってすれば足り,必ずしも裁判上の請求による必要はありません。通常は,請求権を行使したことが明確になるよう配達証明付の内容証明郵便で行います。

また,遺留分を保全するに必要な限度ですることを要します。
遺留分を侵害する遺贈と贈与がある場合,遺留分権者はまず遺贈を減殺しなければならず,それでも不足するときに贈与を減殺することができます。

遺贈が数個あるときは,被相続人が別個の意思表示をしていない限り,各遺贈の価額の割合に応じて減殺されることになります。贈与が数個あるときは,後の贈与から減殺を始め,順次前の贈与にさかのぼることになります。

遺留分の減殺請求権は,遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知った時から1年間にこれを行使しないとき,又は相続開始の時から10年を経過したときは,時効によって消滅します。

したがって,遺留分が侵害されているとして,減殺請求権を行使したいと考えている場合,早めに行動を起こす必要がありますが,上記のとおり,遺留分減殺請求権の行使には,法律上の制約等もありますので,一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 

12.弁護士費用

1.相談
当事務所では、初回30分までは無料で行っています(30分を超える場合、又は2回目以降は、30分あたり5,400円となります)。

 

2.遺産分割事件(調停、審判)、遺留分請求事件など    
次の基準の通りです。また、裁判所におさめなければならない印紙代・切手代をはじめとする実費については、別途依頼者にご負担いただきます。
遺産分割事件の場合、弁護士費用計算の基礎になる「経済的利益」の額は、対象となる相続分の額になります。ただし、相続人の間で争いのない部分については3分の1の額を基準に計算します(減額することになります)。
 
この基準に従って計算した場合に、着手金が高額になる場合は、依頼される方の事情に応じて協議の上調整させて頂きます。

(基準) 経済的利益の額 着手金 成功報酬

(基準) 経済的利益の額 着手金 成功報酬
300万円以下の場合 経済的利益額×8% 確保した経済的利益額×16%
300万円を超え
3000万円以下の場合
5%+9万円 10%+18万円
3000万円を超え
3億円以下の場合
3%+69万円 6%+138万円
3億円を超える場合 2%+369万円 4%+738万円

(この表の金額に消費税率分を加算した金額が弁護士費用になります。)

 

3.相続放棄申述
原則 10万8000円。
但し、特に労力時間を要する場合は、協議によります。

 

4.遺言作成
原則 10万8000円。
但し、特に労力時間を要する場合は、協議によります。

遺言執行 基本 300万円以下の部分 30万円
  300万円を超え3,000万円以下の部分 2%+24万円
  3,000万円を超え3億円以下の部分 1%+22万円
  3億円を超える部分 0.5%+204万円

特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する。

 

 

相続に関するQ&A

相続に関する質問例をいくつかご紹介します。

(ご覧になりたいQの質問文をクリックしていただくと、答えのページへ移動します)

 

Q. 遺産分割協議が成立しないと、亡夫が残した銀行預金の払戻しを受けることはできない?

 

Q. 元夫が死亡し、元夫の再婚相手から遺産分割協議を行いたいと連絡があった。私には元夫との間に未成年の息子がいる。どのように協議を進めたらよい?

 

Q. 父が亡くなりました。相続人は私と兄の2人。父の預金を調べたところ、父の生前、兄によって大金が引き出され流用されているようです。これは「特別受益」にあたりますか?

 

Q.昨年、父が亡くなりました。私は3人兄弟の末っ子ですが、父は、長兄に単独で相続させる遺言を残していたことが分かりました。 遺留分を主張したいのですが、遺留分減殺請求権には1年間の時効があると聞きました。時効になって遺留分を主張できなくなるのを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。