スタッフのコラム

出会い系「サクラ」の証明方法(弁護士 村上英樹)

 先日、出会い系サイト運営会社に対して損害賠償を命じる判決のニュースがありました。

 具体的には、出会い系サイトで女性会員を装った「サクラ」にだまされ、2000万円超の利用料を支払わされたとして、福岡県の50代の男性が運営会社に損害賠償を求めた訴訟で、控訴審(東京高裁)は、「サクラ」の存在を認め、出会い系サイト会社が行った行為は詐欺にあたるとして、男性の訴えを認めました。(その前の地方裁判所では、男性が敗訴、つまり、裁判所は男性の訴えを認めていませんでした。)

 さて、このようなニュースをみて、私たち弁護士の目から見て気になるのは、出会い系サイトでメッセージなどをやり取りする相手の「サクラ」と思われる女性が、「サクラ」なのか普通の女性会員なのかをどうやって見分けるのだろう?つまり、「サクラ」が本当に「サクラ」であるとどうやって証明したのだろう?という点です。

 そこで、この事件の判決ではありませんが、過去の「出会い系サイト」の裁判例を調べてみました。

 近いところで、

さいたま地方裁判所越谷支部平成22年(ワ)第252号損害賠償請求事件

平成23年8月8日判決

があります。

 この事件も同じ「出会い系」の事件ですが、原告(被害者)は女性でした。

 「出会い系」の利用を開始するや、資産家,会社社長,医師や芸能人(を名乗る男性会員)から次々とメッセージが届き、どんどん利用料を追加して利用したが、結局、何やかんやと理由をつけて、「会えそうで会えない」ままに終わったという案件です。

 この 資産家,会社社長,医師や芸能人を名乗る男性会員が出会い系会社側が用意している「サクラ」と思われるわけです。

 上記の判決文の中で、資産家等を名乗る男性会員は「サクラ」だと認められているのですが、その理由は次の通りです。

 「サクラ」の人が、「実は僕サクラでした」と白状した、ということはやはりありませんでした。

 消費者の苦情について全国的に取り扱う国の機関として、「国民生活センター」があります。また、各市町村に「消費生活センター」があります。

 これらのセンターを結ぶ情報ネットワークとして「PIO-NET」(パイオネット。全国消費生活情報ネットワーク・システム)というものがあります。

 この「PIO-NET」には、消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)が全国規模で集約され、たとえば、「○○社」という出会い系サイト会社に関する苦情事例の件数も内容も集約されて調べることができるようになっています。

 上のさいたま地裁越谷支部の判決では、「PIO-NET」の情報が有力な判断材料とされています。

 つまり、同じ「出会い系」サイトについて、この被害者が遭ったのとまるで同じような苦情が「PIO-NET」に寄せられており、同様の「サクラ」とおもわれる異性会員に騙されたという例が全国的に多発しているというのです。手口もまた大変似通っているということも「PIO-NET」の情報からある程度明らかになっていたようです。

 「PIO-NET」の情報や、実際の事件のいきさつや、サーバーを通して会員にメール交換をさせればさせるほど業者の利益が増える仕組みを総合して考えれば、出会い系「サイト」側が「サクラ」を用意していることが認められる、と裁判所が認めています。

  

 「証明」といっても、「この人はサクラです!」ということを直接証明することは難しいのですが、全国規模の被害情報の状況も含めた「間接事実」の積み重ねで、「サクラ」が証明されている、というわけです。

 例えば、借金の事実を証明する場合の「借用証」などの分かりやすい証拠(主に「直接証拠」)があれば楽ですが、そうでない場合でも、手を尽くして真実を証明するということが弁護士の仕事の一要素でもあります。

                                    弁護士 村上英樹