スタッフのコラム

先物取引の勧誘規制緩和は問題あり(弁護士村上英樹)

 6月1日から、商品先物取引について、勧誘の規制を緩和する省令が施行される予定になっています。

 私は、これまで、商品先物取引被害の事件について、神戸証券・先物被害研究会などの先生方とともに多くの訴訟等を担当してきました。

 そのトラブルの多くが、高齢者や主婦も含む個人に対して、頼まれもしないのに訪問や電話で勧誘がなされた(これを「不招請勧誘」といいます)ことがきっかけで始まっていました。

 上手い言葉に乗せられて、最初は少ない金額だけで始まった取引が、訳の分からないうちに追加金を求められ、何千万円もの被害になる、という案件が典型的なパターンでした。

 「あの電話一本がきっかけで、結局何千万円も失うことになった」という例が数多くあり、その被害を回復するために、何年間も訴訟をやって、それでも回復できることもあればできないこともある、という世界でした。

 幾ら裁判で戦っても、次から次への被害が発生することに変わりは無い、ならば、そのトラブル発生の「根っこ」を押さえよう

ということで、多くの弁護士が声を上げて、トラブルの「根っこ」であった勧誘を規制する法律を作る活動がなされました。

 そして、平成23年に完全施行された商品先物取引法で個人に対する不招請勧誘が禁止されてからは、このような被害は目に見えて減りました。

 ところが、今回、業界側からの要望を受けたのか、この不招請勧誘を、顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有する者である場合に、顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合は規制から外す、という省令改正がなされました。

 「顧客の理解度を確認する」というのを歯止めにする、という考え方だと思われるのですが、何とか契約を取りたい営業社員の「理解度チェック」は甘いものになることが容易に想定されます。(実際、これまで先物被害裁判で現れた事実からみて、全く取引の内容を理解していない顧客でも「理解している」という書類が作られていることが数多くありました。)

 今回の省令改正は、せっかく減らすことができた先物取引被害をまた発生させる恐れのあるもので、大いに問題があると思います。

 この点、消費者サイドからすれば注意が必要ですし、私達弁護士としては再度省令の改正等を求めて規制緩和の撤回がされるように活動するべきだと考えています。

 弁護士会でも次の通りこの規制緩和に反対する会長声明を出しています。

兵庫県弁護士会

http://www.hyogoben.or.jp/topics/iken/pdf/150130seimei.pdf

 

                                     弁護士 村上英樹