スタッフのコラム

「こんなものだ」・・裁判こぼれ話 その3  (弁護士 妹尾圭策)

 ある地方都市の裁判所で聞いた話である。
 某氏は、その在職中、専ら刑事事件の法廷に立ち会い、名物廷吏として知られていた。某氏は、大声でのかけ声などにより、法廷に独特の雰囲気を醸し出していたが、その職責を超えて、判決の量刑についても余人の追随を許さない判断力を有していると目されていた。
 某氏が立ち会った法廷では、判決の言渡しがあり、裁判官が退廷した後、多くの被告人や弁護人は、某氏の意見を聴いていたという。そして、某氏が「これは一寸重いな。」と述べた事件では、控訴審で減刑判決を期待することができ、他方、某氏が「こんなものだ。」と述べた場合には、控訴しても量刑は変わらなかったということである。
 裁判員制度の実施に当たって、法律の素人である裁判員に、事実認定のみならず、量刑判断にまで関与させることの当否について議論があった。
 上記の事実は、法律の専門家ではなくても、事件内容を十分把握していれば、適正な量刑判断が可能であることを示しているといえる。もっとも、某氏のように長年にわたり多くの事件をみてきた人と、一回だけ事件に関与する裁判員とを同列に論じることはできないであろうが。
                                        (弁護士 妹尾圭策)