スタッフのコラム

修飾語の位置 気になる日本語 その2   (弁護士 妹尾圭策)

 国立国語研究所の所長であった岩淵悦太郎氏編著の「悪文」は,かつて,文章作成についての古典的教科書とされていた。その中にある「悪文をさけるための五十か条」の一つに,「修飾語と修飾される語とは,なるべく近くにおく。」というのがある。

 テレビを観たり,新聞や本を呼んでいると,修飾語が修飾される言葉よりも随分前に出てくることが,しばしばある。この傾向は,書き言葉よりも,話し言葉においてより顕著である。修飾語が早く出てくるのは,それを強調したい場合が多いように思われる。
 話し言葉は,推敲した上で表現されるとは限らないし,また,単語と単語の間に適当な間(ま)を置くことなどによって,誤解を招かないようにすることが可能である。
 書き言葉の場合は,話し言葉のようにその場限りで消えてしまうものではなく,必ず後に残るであるから,十分推敲することが求められる。

 最近読んだある書物に,次のような文章があった。「○○(主人公)は,(中略)けっして法廷の音が聞こえないところには行かなかった。」
 この文章を読むとき,初めは,「けっして」が「聞こえない」に掛かるかのように受け取り,文章としておかしいなと感じ,最後まで読んで,「行かなかった」に掛かるのだろうと判断すると思われる。
  「法廷の音が聞こえないところにはけっして行かなかった。」と書くことに,なんら支障はないはずである。
 次は,甲子園球場で先日行われたプロ野球の阪神対巨人戦についての新聞記事からである。「肌寒さも影響してか伝統の一戦ながら,観客数は(中略)昨季の甲子園初戦に約2千人及ばなかった。」と記載されていた。
 「肌寒さも影響してか」は,「伝統の一戦ながら」の後ろに移動させるべきであろう。
                                        (弁護士 妹尾圭策)