スタッフのコラム

台風21号被害,神戸-関空ベイシャトル(弁護士 村上英樹)

 9月4日の台風被害,現代では珍しいくらい大きく,今日でもまだ停電のところもあり,被害に遭われた方に心からお見舞い申し上げます。

 この台風によるタンカーの橋への衝突で関空が孤立化し,道路再開までは神戸空港と関空を結ぶ航路(神戸-関空ベイシャトル)が唯一のアクセス方法になりました。

 現在も,JR・南海とも使えないので,この航路を利用する方法が貴重な手段になっています。

 今から6年前,2012年に神戸-関空ベイシャトルの運営会社が民事再生手続(借金を整理した上で会社を存続するための手続)をしたとき,私が再生申立代理人として関わりました。

 そのとき,確かに,ベイシャトルを存続させる意義の一つとして,「危機管理対応のため災害時の代替ルートが必要である」という意見が出されていました。

 以下が当時の資料(神戸市みなと総局外郭団体あり方検討委員会「みなと総局外郭団体の改革に関する意見書」 神戸市HP内 http://www.city.kobe.lg.jp/life/access/harbor/img/arikata_iinkai-9-5.pdf)の抜粋です。

 (同資料抜粋)

 危機管理に対応するために陸上の代替ルートを会場に確保しておくことは市民の安心と安全に通じる。(中略)

 この点はすでに阪神・淡路大震災の折に経験されたように,海上ルートは旅客や物資の輸送について,陸上の交通モードに代わって重要な機能を果たしたし,また東日本大震災においても,海上ルートは重要な危機管理対応機能を果たしていることからも検証できるし,また今後発生を予想される大地震に対しても,神戸と大阪,また神戸空港と関空を結ぶルートの多面的確保が必要である。

                                      (抜粋終わり)

 このくだりを確かに私は覚えていました。

 ただ,当時は,ここ数日のニュース画像のような事態が本当に来るという想像などはとても出来ませんでした。

 抽象的には「災害時のルート」という意味も確かにあるんだな,というくらいですが,といってもベイシャトルが唯一のルートになる瞬間がある可能性といえば,まさか,という感覚だったと思います。この台風が来るまでは。

 

 海上ルート,航路の確保というのが,災害時対応において極めて重要であるということが今回よく分かりました。

 ただベイシャトルもそうであるように,航路を維持するということは経済的には大変なことです。船を確保する費用もそうですし,動かすためのコスト(燃料代など)も大きく,経済効率からいえば本当に大変です。

 ベイシャトルも神戸市の第三セクターが運営していますから,例えばこの航路を維持するかどうかも神戸市の政策課題,つまり私たち神戸市民の考えにより決まることです。

 災害時のための海上ルートの確保,船便の確保は,社会全体にとって必要なコストですが,それにどこまでお金をかけるのか,ということを私たち一人一人が考える必要がある,ということだと思います。

 

 船のこともそうですが,それに限らず,災害時への備えというのは本当に想像力の要るものだと思います。

 ただ,人間の想像力といっても,やはり「ヒント」があって,「ヒント」を活かして働くということが多いもの。

 上で抜粋した意見書でも,やはり,阪神・淡路,東日本の経験を引いて海上ルート確保の必要性が説かれています。 

 今は災害からの復旧の時期です。その過程で,また,その復旧が一段落した後も,とにかくそこで得られた知恵を次の災害対応に繋げていく,ということだと実感しています。

 

 台風の後,北海道の大地震もあり,被災された方は今それどころではない状況だと思います。

 そういう時期に「災害対応の一般論」や「将来の災害対応」の話をするのは大変気が引ける部分があるのですが,気づいたことは気づいたうちに書き残しておくべきだと思って書いています。

 台風,地震により被災された方々の生活が一日でも早く平常に近いものになることを心からお祈りします。

 自分もそのためにできることをしたいと思います。

 

 東日本大震災のときもそうでしたが,災害があったとき,直接被害を被っていない人も「自分は何も出来ない」と苦しむことがあります。

 しかし,「実際にボランティアとして現地に行ける」とか,「災害復興に直接関われる」という立場の人は限られていて,人それぞれの立場や事情があり,そうできない人がほとんどです。

 災害復興への関わりは,もちろん寄付や物資の支援でもいいですし,そうでなくても,各自が自分の持ち場で,普段の仕事をちゃんとすることによっても十分に役立っています。

 関係なく見えても,普段の仕事,その集合である社会の機能がしっかり維持されていることで,被災地・災害救助・災害復興の現場で働く人がそれに集中できます。

 一人一人が無理なく自分が出来ることで災害復興にも寄与していく,今はそのときだと思います。

                                  弁護士 村上英樹